はじめに
こんにちは。ミルディアの廣瀬です。
先日、ITプロとしてお恥ずかしいことに『インターネット通販詐欺被害』に遭いました。人は思いがけず、自分でもなぜそんなミスをしたのか分からない行動をとってしまうようです。
ある種、滅多にできない経験ですので、人生経験だと思って被害届の提出まで一通りやってみました。「実績解除」したので二度とご免ですが、その記録と注意喚起を共有します。
※本記事は個人の体験に基づく記録であり、法的なアドバイスではありません。具体的な対応は警察や弁護士等の専門機関にご相談ください。
プロローグ~詐欺サイトに引っ掛かるまで~
詐欺サイトで購入してしまう
きっかけは『DXグーデバーン』を探していた夜のことでした。えっ?グーデバーンをご存じでない?
ナンバーワン戦隊ゴジュウジャーに登場するあのボクシングスタイルで戦う『グー(拳)でバーン!(っとパンチ)』ですよ。知らない方には意味不明かと思いますが、本質ではないのでこの辺にしておきます。
要するに『DXグーデバーン』とは、戦隊ヒーローの合体ロボのおもちゃです。

当時この商品は軒並み品切れで、ネット上では定価の2〜3倍で取引されていました。転売屋滅ぶべし、慈悲はない!
さすがに放送中の番組のおもちゃを定価より高値で買うことに抵抗があった私は、中古品を日々探しておりました。検索キーワード『DXグーデバーン 中古』というキーワードで日々検索を続けていました。
そんなある日、あまり見慣れないサイトで「中古未開封」の出品を発見。在庫がある喜びに浮かれ、深く考えずに購入手続きをしてしまいました。
騙されたことに気付く
注文直後に確認メールが届き、翌日には「カード決済が未完了のため、銀行振り込みをしてほしい」と連絡がありました。不信感も抱かず即座に振込を済ませると、先方からもすぐに入金確認メールが届きました。
ところが、これが最後の連絡になりました。5営業日経っても発送連絡がないので催促のメールを送った後、改めてサイトを眺めてみました。そこでようやく、違和感に気づいたのです。
サイト内の怪しいポイント
冷静になってサイトを見ると、おかしな点ばかりでした。

脈絡のない商品展開とドメイン
おもちゃからスポーツ用品、手芸雑貨までカオスな品揃え。おそらく、フリマサイト等のデータをスクリプトでコピーしてコンテンツを作っているのでしょう。また、URLやメールアドレスのドメインがランダムな英数字の羅列で、使い捨てドメインの典型的なパターンでした。
情報の整合性が取れていない
特に怪しかった点は以下の通りです。
- 会社概要は『雑貨小売』なのに、生産拠点の記載がある。
- 所在地は福島県なのに、発送元は京都府。
- 問い合わせFAX番号が090(携帯番号)始まり。
- 『ハッセル払い戻しポリシーなし』『世界中の無料税』など、機械翻訳のような不自然な日本語。
- 後で調べたところ、これらは詐欺サイトの頻出単語のようです。
サーバー証明書のページが偽造
決定打はこれでした。 サイト内にセコムWebステッカーの画像があったのですが、クリックしてもセコムの公式サイトに飛びません。
『セコムWebステッカー』とはセコムトラストシステムズ株式会社さんのサービスで、「このWebサイトは怪しいサイトではないですよ」とお墨付きをくれるサービスです。サービスについての詳細は以下を参照してください。
- セコムWebステッカーについて
本物はURLがhttps://www.login.secomtrust.net/~~になりますが、私が見ていたサイトは見た目はそのままURLは全くの別物。SSL証明書はいわゆるオレオレ証明書。悪意がなければそんなことにはならないので騙す意図があることを確信します。
気付いてからの初動アクション
ここからは詐欺サイトであることを確信してからとった行動です。

金融機関に連絡
まず連絡すべきは警察ではなく、相手の口座がある金融機関です。自分のではなく、相手の口座がある金融機関に連絡する、というところに注意です。
これは『振り込め詐欺救済法』に基づき、相手の口座を凍結させるためです。犯人が現金を引き出す前に口座を凍結できれば、被害金が戻ってくる可能性があります。警察との連携にはタイムラグがあるため、被害者自身が即座に通報することが最も有効な手段です。
以下のサイトで凍結された口座の公告を確認できるのですが、すでに他の方の通報で凍結されている場合もあります。
- 振り込め詐欺救済法に基づく公告等システム
通報
次に警察に通報です。ここで、おそらく通報慣れしていないであろう多くの善良な市民の皆様は気付かれるかと思います。
・・・どこに?
もちろん警察に。それは分かっているけど、どうやって?110番に電話?本当?
そう110番はあくまで緊急通報専用の回線であり、緊急対応が必要のない詐欺被害の相談の窓口ではありません。
選択肢は大きく3つあります。
警察署の相談窓口
最寄りの警察署に直接に出向いて、対応してくださる方にインターネット詐欺被害にあった旨をお伝えください。一般的には事前にアポイントメントをとる必要もないので、被害にあったことに気づいたら可能な範囲ですぐに赴いてOKです。
電話窓口
直接警察署に赴くのも現実的には難しいと思います。その場合は『#9110』に掛けることで電話で相談することができます。(シャープも必要です)110番の対になっているのはこちらですね。
こちらは警察の急を要しない事件や要望・意見、苦情等を受け付ける相談ダイヤルで、全国共通でこの番号に掛ければ各都道府県の警察署窓口に転送される仕組みです。
こちらでもインターネット詐欺被害にあった旨を伝えればその後どうするべきかは案内してくれると思います。
Webの通報フォーム
警察庁の警察行政手続サイトにはサイバー事案に関する相談窓口の案内があります。
https://www.npa.go.jp/bureau/cyber/soudan.html
Webフォームでの通報窓口が設置されているので、ここから通報するのも一つの手です。私の場合はここから通報して管轄の警察署から連絡が来て手続きが進みます。
私が利用した時点では独自のWeb通報フォームがあったのですが、令和7年12月15日からe-Gov電子申請(デジタル庁が運営する電子申請のポータルサイト)に統合されたそうです。こちらは利用したことがないので何とも言えませんが、基本的な流れは同じかと思います。
クレジットカード会社へ連絡
今回は最終的な被害は銀行振込でしたが、詐欺サイト上でカード情報を入力してしまっていたため、念のためカードの利用停止と再発行を行いました。入力情報は盗まれている前提で動くのが安全です。
詐欺であることを証拠を用意
金融機関と警察への連絡で初動は完了ですが、被害届を正式に受理してもらうには『相手に騙す意図があったこと』を証明する必要があります。
これが意外と厄介です。
もしかすると何らかの原因で配送が遅延しているだけかもしれません。その場合はもちろん詐欺事案として立件することはできないので、何らかの形で客観的にみて先方が騙す意図があったことを立証する必要が出てきます。
そこで有効なのが、サイトに記載された住所へ『内容証明郵便』を送ることです。ネットから24時間発送できる『e内容証明』が便利です。
- e内容証明(電子内容証明)
『記載された住所に企業が存在しない=虚偽の情報を表示していた』という強力な詐欺の証拠になります。
どうせ届かないので内容はなんでも良いのですが、一応『契約解除通知書兼返金請求書』といった名目で送ります。(サクッとAIに書いてもらいましょう)
内容証明を送るのは安くない出費ですが、これで『騙された証拠』が完成します。
警察署での戦い(事情聴取〜被害届の受理まで)
証拠が揃ったら、いよいよ刑事さんとの対面です。

被害状況の聴取
警察署に赴いてことの顛末を説明します。いわゆる事情聴取ってやつです。
事前に必要な資料はIT犯罪であっても、資料はすべてプリントアウトが必要です。私が持参したのは以下の通りです。
- 実際の時系列が分かるメモ書き
- 詐欺被害にあったサイト(トップページ、商品ページ、会社概要、偽造された証明書ページ)
- メールのやり取り(ヘッダー情報を含む)
- 振込明細のスクリーンショット
- 詐欺サイト/相手メールのドメインのdig/whoisコマンド結果(ドメイン調査結果)
- 宛先不明で返却された内容証明郵便
担当の刑事さんが必ずしもITに詳しいわけではないため、偽造証明書・dig結果・whois情報よりも『内容証明が戻ってきた』という物理的な事実の方が、証拠としてはスムーズに採用されました。
そこまで細かい技術的なことまで分かっているのに何で騙されたの?感がいたたまれなかったのは内緒です。
供述調書・被害届の読み合わせ
後日、再び警察署に出向いて作成してもらった調書・被害届の読み合わせです。
正式な公文書として扱われるため注意が必要です。伝わればよい、というものではなく些細な表記ブレも見逃してはいけません。僅かなミスも要修正・要訂正印となり、あまり本質的ではなさそうな以下のような表記ミスも修正対象でした。
- ×・・・ナンバーワン戦隊ゴジュージャー
- ○・・・ナンバーワン戦隊ゴジュウジャー
ミスのチェックも済んで、正式に被害届として受理してもらうと、管理番号が採番されて今後は事件として捜査・対応して頂く流れになります。
エピローグ~この後の展開は?~
さて、この物語は(おそらく)ここで終了です。
えっ?事件捜査は?むしろここからでは?と思うかもしれませんが、以下のような事情からこれ以上の進展は望めないのが実情のようです。
- 捜査状況について個別に連絡を貰えることはほとんどない
- インターネット詐欺被害はほとんどが海外を経由していて、日本の警察に捜査権が及ばない
- 金融機関の口座凍結もほとんどの場合は凍結前に残高が移されていて、被害額が戻ってくることは少ない
実際digコマンドとwhoisをかけた結果、やはり海外のレジストラを経由しており、その時点で内心は諦めモードでした。私が被害に遭った口座も、凍結時の残高はわずか73円でした。
一応正式な公文書として被害届は残るので、万が一別件などでも犯人が捕まった場合は参考人として呼ばれる可能性はあるそうです。
時系列まとめ
改めて振り返ると、通報から被害届が受理されるまでに一か月。被害届が受理された連絡を受けた時には既に被害にあった詐欺サイトは消えてなくなっていました。
なんとも歯切れの悪いエピローグです。
2025/08/20頃:DXグーデバーンを求めてネットサーフィンを開始。
2025/08/26:詐欺サイトで購入手続きを実行。
2025/08/27:振り込み依頼メールを受信→銀行振り込み実行。
2025/09/04:異変に気付く → 金融機関へ連絡(口座凍結依頼) → 警察へWeb通報。
2025/09/05:警察から連絡 → 内容証明郵便を発送。
2025/09/08:改めて刑事課知能犯係の担当の方から電話連絡。アポどり。
2025/09/10:内容証明が宛先不明で返ってくる。警察署に出向いて事情聴取。
2025/09/30:調書ができたと連絡があり、読み合わせのアポどり。
2025/10/07:警察署に出向いて被害届・調書の読み合わせ。同日午後に被害届の受理。
その後
あっ物語の続き、一つだけありました。
当時は品切れ品薄になっていた商品ですが、その後メーカーによって増産されたのか、在庫が復活し無事に正規ルート・正規価格で確保することができました。
裏で父がこんな戦いをしていたことなどつゆ知らず、子供は喜んでDXグーデバーンで遊んでいます。
せめてこの子は将来は詐欺を働く悪いやつをグーでバーン!っとやっつける正義の味方になってもらいたいものです。いや、暴力はダメなので、せめてITリテラシーとセキュリティ意識で戦える大人になってもらいたいところです。(まずは自分が引っかからないように精進します!)
皆様も、怪しい通販サイトにはくれぐれもご注意ください。

