はじめに
こんにちは。自称ミルディア一番のディズニーオタク、廣瀬です。
突然ですが、ミュージカルはお好きですか?もちろん私は大好きです。
苦手な方から「なぜ歌うのかよく分からない」という声を耳にしますが、ミュージカルの大半の曲には役割があり、演出手段の一つとして歌っているに過ぎません。
今回はそんな苦手な方のために、ミュージカルをSEらしく構造的に分解します。その上で、具体例と共に鑑賞ポイントを紹介してみます。
なお、リンクしている動画は全て権利者が公開しているものです。
リンク切れ等はご容赦ください。
物語の世界を理解するための『"Introduce" ソング』
原則として、ミュージカルには物語(ストーリー)が存在します。
物語である以上、舞台となる世界や主人公(達)の置かれた立場、状況などがあり、その前提を元に話が進んでいきます。
その前提を自然な流れで説明するのが『"Introduce" ソング』です。
※ 他に紹介する3つと違い、これだけ私が勝手に名付けた用語のため、他では通じません。
多くの場合は1曲目はこれです。歌詞や具体的なタイトルがついておらず、「Opening Number」「Introduction」「Overture」と呼ばれていることも多いです。
『"Introduce" ソング』具体例
サークル・オブ・ライフ (From 『ライオン・キング』/日本語版)
ふしぎなマドリガル家 (From『ミラベルと魔法だらけの家』)
ようこそ!ロサス王国へ (From 『ウィッシュ』/日本語版)
魔法などファンタジー要素が当たり前に存在する世界の場合は、歌詞や映像で説明が入ります。
雄大なサバンナで巡る命の循環、南米のとある魔法の才能を与えられた家族、地中海の豊かで願いが叶う王国など。この曲を聴けば、もうあなたはこの物語の住人です。これから始まる物語の雰囲気や設定も完璧に理解できたことでしょう。
人物の立場・性格などを紹介する『"I Am" ソング』
舞台の説明の次は人物です。
登場人物が自分自身について歌う曲を『"I Am" ソング』と言います。
こちらは一般的に使われる用語なので、安心してドヤ顔で披露してもらって大丈夫です。
こちらは登場人物の立場・性格などを鑑賞者に伝える役割を果たします。
この次に紹介する『"I Wish" ソング』と違って鑑賞者は共感できなくても問題ありません。この人はこういうキャラなんだな、ということが伝わればよいのです。
そんな経緯から主人公だけではなく、悪役や相棒ポジションの面白枠など、一作品の中でも複数キャラクターの曲があることも多いです。
『"I Am" ソング』具体例
俺のおかげさ(From『モアナと伝説の海』)
お母様はあなたの味方 (From『塔の上のラプンツェル』)
人気キャラの曲は名曲が多く、ここに着目することであなたの新しい推しが見つかるかもしれません。
目的・願いを歌い上げる『"I Wish" ソング』
こちらもミュージカルには欠かせません。『"I Wish" ソング』も一般的にも広く使われる用語なのでミュージカル好きの友達に話しても多分大丈夫です。『"I Want" ソング』と呼ばれる場合もあります。
その名の通り、『私は〇〇を望みます』と歌い上げるのがこの括りです。性質上気持ちがこもった曲が多く、作品の顔とも呼べる曲が多いです。
物語序盤の一番盛り上がるところに来ることが多く、2、3曲目に主人公が歌い出したらだいたいこれです。
主人公の願いは鑑賞者が共感できる普遍的なものが多いのですが、稀に悪役が悪役たるために、歪んだ願望を歌い上げることもあります。
『"I Wish" ソング』具体例
夢まであとすこし (From『プリンセスと魔法のキス』)
生まれてはじめて(From『アナと雪の女王』)
この曲が流れると、この物語の目指す方向性が決まります。
前述の『"I Am" ソング』と役割を兼任する曲も多く、一概に線引きできないケースもありますが、こちらもそのキャラクターの内面の魅力を引き出します。
状況や立場など対比構造を強調する『リプライズ』
少し毛色が変わりますが、『リプライズ』もミュージカルではとても重要な要素の一つです。
これも一般用語なので他の人に話しても安心です。
『リプライズ』とは英語で『反復、繰り返し』といった意味の単語で、ミュージカルにおけるリプライズは『同じメロディーやフレーズを異なるシーンで再び使用する表現演出』というような意味になります。
最初に曲が流れたシーンとの状況の違いや、心境の変化に合わせてアレンジが入ることが多く、『"I Am"ソング』や『"I Wish"ソング』のリプライズが流れる時、それすなわち物語が大きく動く瞬間です。
『リプライズ』具体例
パート・オブ・ユア・ワールド (From 『リトル・マーメイド』/日本語版)
この曲は海にすむ人魚のお姫様が、自分の知らない陸の世界への憧れを歌い上げる曲で『"I Wish" ソング』の代表格です。
実はサビ部分の歌詞は以下の通りでタイトルと微妙に違います。(英語歌詞のほうが対比が分かりやすいので歌詞も引用)
(日本語歌詞)
いつの日か 陸の世界の果てまでも
行きたい 人間の世界へ(英語歌詞)
Out of the sea Wish I could be
Part of that world
『Part of that world』であって、あの世界(人間の世界)に対しての漠然とした憧れに過ぎないわけです。
ではどのようにして、憧れの対象が『あの世界』から『あなたの世界』へと変わるのか。
それがこの座礁した船に乗っていた王子を助けたシーンです。
パート・オブ・ユア・ワールド(リプライズ) (From 『リトル・マーメイド』/日本語版)
(日本語歌詞)
なにかが始まる 変わる 私の世界が
必ず 会いに行く あなたに(英語歌詞)
Watch and you'll see, someday I'll be
Part of your world
偶然居合わせた人魚が恋に落ちた瞬間です。
漠然とした『あの世界』が明確に『あなたの世界』になり、『いつの日か』が『必ず』という決意に変わった瞬間なのです!
曲のタイトルをあえてリプライズから採用する。実に粋ですね。
まとめ
表形式にまとめるとこんな感じです。
| 分類 | 役割・特徴 | 登場タイミング・補足 | 具体例(ディズニー映画) |
|---|---|---|---|
| "Introduce" ソング | 物語の世界観、舞台、前提となる状況を自然に説明し、観客を物語へ引き込む。 |
多くの場合1曲目。 「Opening Number」や「Overture」などとも呼ばれる。 |
『サークル・オブ・ライフ』(ライオン・キング) 『ようこそ!ロサス王国へ』(ウィッシュ) |
| "I Am" ソング | 登場人物(主人公、悪役、相棒など)の立場や性格を自己紹介として伝える。 |
観客の共感よりも「こういうキャラだ」と理解させることが目的。 |
『俺のおかげさ』(モアナと伝説の海) 『お母様はあなたの味方』(塔の上のラプンツェル) |
| "I Wish" ソング | キャラクターの目的や強い願いを歌い上げる。物語の目指す方向性を決定づける。 |
序盤の2、3曲目で一番盛り上がる場面が多い。 「I Want ソング」とも呼ばれる。 |
『夢まであとすこし』(プリンセスと魔法のキス) 『生まれてはじめて』(アナと雪の女王) |
| リプライズ | 過去と同じメロディーやフレーズを異なるシーンで反復し、状況の違いや心境の変化を描く。 |
物語が大きく動く瞬間に使われる。 対比構造を強調する演出。 |
『パート・オブ・ユア・ワールド(リプライズ)』(リトル・マーメイド) |
これでミュージカルの押さえるべきポイントは完璧ですね!
シンプルに構造化すれば、だいたいの物語は主人公の『夢・目標・目的・願い』などなどが、いかに達成されるかを描いたものです。
物語の舞台を理解し、登場人物を把握し、目指す方向性が示され、大きく転じるところもバッチリとなれば、この物語は攻略したも同然です。
あとは物語の結末をドキドキしながら見守りましょう。
もっと紹介したい曲や例がありますが、ひとまずはこの辺にしておきます。
具体例も全てディズニー映画から引用させてもらいましたが、他のミュージカルでもそのまま当てはまるので、舞台や映画を鑑賞する際は少し思い出していただけるとより楽しめるかもしれません。
これをきっかけにミュージカルの世界の魅力に興味を持ってもらえれば幸いです。

