前置き

こんにちは。自称ミルディアのフォント警察、廣瀬です。
色々なドキュメントの中にうっかり紛れ込んだ『MSゴシック』をこっそりと他のフォントに変更して回っています。

チャットツール、Eメール、設計書、見積書や請求書などのビジネス文書、ソースコード、成果物のアプリケーション、ポスターや看板、チラシ・・・etc
日々の業務や私生活で私たちは多くの文字と向き合っています。そんな文字に囲まれた私たちの生活で、実は重要な役割を担っている『フォント』について熱く語ってみたいと思います。

文字コードとフォント

文字コードとは

コンピューターは、0と1の2進法で情報を処理します。 文字をコンピューターで扱うために、文字一つひとつに0と1のコードを割り当て、人間が理解できる形に変換しています。
文字コードとは文字と2進コードのマッピングルールです。UTF-8やShift_JISなど、様々な種類が存在します。異なる文字コードで解釈すると、文字化けが発生します。

例:
『1110 0011 1000 0001 1000 0010』→『あ』(UTF-8の場合)
『1110 0011 1000 0001 1000 0010』→『縺�』(S-JISの場合)

UTF-8というルールで書いた「あ」をS-JISというルールで読んだ例
UTF-8というルールで書いた「あ」をS-JISというルールで読んだ例

フォントとは

コンピューターが正しく『あ』という文字を認識しても、画面に表示しないと人間は読めません。
フォントとは文字コードに対応する、具体的な文字の形状情報です。同じ文字コードでも、フォントによって見た目が異なります。そのため、同じ『あ』という文字でも適用するフォントが変われば形も変わります。

いろいろな『あ』

フォント選びの重要性

我々ITエンジニアにとっても適切なフォント選びは重要です。

可読性向上: コードとドキュメントの効率的な理解

ソースコードや設計書は、複雑な情報を含んでいます。可読性の高いフォントを選ぶことで、コードの誤読を防ぎ、バグの発見や修正を迅速化できます。
長時間のドキュメント作業においても、目の疲れを軽減し、集中力を維持する上で、フォントの可読性は重要です。

一番読みやすいのはどれでしょう?

表現力: UI/UXデザインとユーザーへの印象

UI/UXデザインにおいて、フォントは視覚的な印象を大きく左右します。適切なフォントを選ぶことで、アプリケーションやWebサイトのブランドイメージを強化し、ユーザーエクスペリエンスを向上させることができます。
ユーザーインターフェースにおけるフォントの選択は、操作性やアクセシビリティにも影響を与えるため、慎重な検討が必要です。

フォントが変われば印象も変わる。

コミュニケーション: 情報伝達とプロフェッショナルな印象

プレゼンテーション資料や報告書において、フォントは情報の伝達効率を高め、重要なポイントを印象付けることにも貢献します。
特に、技術的な内容を説明する際には、フォント選びによって情報の理解度が大きく変わることがあります。適切なフォント選びは、相手に正確かつ迅速に要点を伝えるための強力なツールとなります。

パッと見ると下の文章のほうが強調箇所に視線が誘導されませんか?

奥深いフォントの世界:異体字とIPAフォント

フォント選びによって広がるのは可読性やデザイン性にとどまりません。

廣瀬という苗字のヒミツ

私は普段は廣瀬を名乗って仕事をしていますが、実は戸籍上の苗字は『廣瀬』ではありません。
では、戸籍上正確な本名はなにかというと『廣󠄅瀨』です。「あぁ、なるほど『瀬』じゃなくて『瀨』ね。」と思った方、半分正解ですが半分は不十分です。

『廣瀨』ではなく『廣󠄅瀨』です。

おそらく、「いったい何を言っているんだ?」と思いましたよね?画像にするとこんな感じ。

廣瀬の微妙な違いが分かりますか?

廣の字が少し違うの分かりますか?
実は左の廣は異字体と呼ばれ、一般的なフォントでは表現できない文字なんです。少し専門的な話になりますが、『瀬(Unicode:U+702C)』と『瀨(Unicode:U+7028)』のように違う文字コードが割り当てられている漢字はなんとか表現できるのですが、異字体によっては『まとめて同じ文字として扱っていいよ』というルールがあります。
その結果、廣は『廣(Unicode:U+5EE3)』に集約され、一般的なフォントでは『廣瀨』と表示されてしまうのです。

異字体に悩む者の救世主(?) IPAexフォント

類似事例の代表。ワタナベさん。これもたぶん全パターン網羅できていない。

ただ、戸籍や地名を扱うシステムの場合、この異字体を表現できないと困る場合があります。そんなときも特殊なフォントを使うとコンピューターや印刷物でも異字体を表示することが出来るようになります。
上記の戸籍上正確な『廣瀨』も手元の端末にこちらのフォントをインストールして表示させました。

参考:[IPAexフォントおよびIPAフォントについて](https://moji.or.jp/ipafont/)

異字体についてだけでブログ記事が数本書けるくらい奥が深いので、この辺にしておきます。

一旦まとめ

長くなったので一旦まとめです。
このように、フォントは、単に文字を表示するだけでなく、多様な表現を可能にするツールでもあるのです。ちょっとしたことですがフォントの重要性が理解できれば、見える世界も少しだけ変わるのではないでしょうか?

後半では具体的なフォントの選び方について触れたいと思います。